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Dr.natural (トーク | 投稿記録) |
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=== | === 本件同人誌の頒布、本件マスクの着用等による原告Aの肖像権及び名誉感情の侵害の成否 === | ||
被告がフェイスマスクをして同人誌を配布した行為が、原告Aをの肖像権及び名誉感情を侵害したのかについてが争点である。 | |||
'''原告Aの主張''' | |||
【肖像権の侵害】 | |||
被告は、本件マスクを着用すると共に、その写真が掲載された本件同人誌を頒布した。当該掲載ページの記載内容に加え、本件同人誌が全体として原告A及び本件ゲームを誹謗中傷する内容であることから、被告は、悪意をもって同原告の顔貌をマスクに使用したといえる。 | |||
したがって、被告が、本件マスクの写真を撮影し、本件同人誌に掲載した行為、及び本件即売会において本件マスクを着用の上、本件同人誌を頒布した行為は、原告Aの肖像権を侵害する。 | |||
【名誉感情の侵害】 | |||
(本件同人誌の頒布、本件マスクの着用等) | |||
上記のとおり、被告は、悪意をもって原告Aの顔貌を本件マスクに使用したものであり、一般の注意と捉え方からすれば、同原告の人格権侵害に値するほどに同原告の社会的評価を低下させるものである。 | |||
したがって、被告の上記行為は、原告Aの名誉感情を侵害する。 | |||
また、本件店舗描写の4コマ目記載の描写(別紙5描写目録記載2)も、原告Aの名誉感情を侵害するものである。 | |||
(本件男性イラストの描写) | |||
原告Aを描写したものと見られる男性イラスト1の発言の描写(別紙5描写目録記載3(1))は、一般の読者の注意と読み方において、同原告が、幼女をレイプしたいとの願望を有し、当該願望を抑えるため、代わりにオナホ(女性器の形状を模した性玩具の一種の名称の略語)を使用しているが、これを使い尽くすほど性欲の強い人物であると理解されるものである。 | |||
また、原告Aを描写したものと見られる男性イラスト2について、当該人物を「勃起豚」と呼ぶ記載(別紙5描写目録記載3(2))があるところ、「勃起豚」とは、性的に興奮した状態を維持している太った人物を意味する。原告Aを「勃起豚」と称することは、原告Aが太った性欲の塊のような人物であることを示すものである。しかも、本件同人誌は、原告Aを「勃起豚」と揶揄するのみならず、男性器が勃起しているようなイラスト(男性イラスト2)で表現しており、原告Aを根拠なく「幼女を連れまわしている」人物であり、幼女に興奮して勃起する人物であるように描いている。 | |||
以上の被告の行為は、いずれも原告Aの名誉感情を侵害する。 | |||
(全文pdf 9~10ページ目) | |||
'''被告の主張''' | |||
否認ないし争う。同人誌という媒体の性質、体裁上、一般読者の通常の読み方に従えば、指摘されるような読み方は成立しない。 | |||
(全文pdf 10ページ目) | |||
原告Aは「肖像権の侵害」「名誉感情の侵害」とそれぞれに分けて根拠を主張している。 | |||
*同人誌の内容(原告A及び本件ゲームへの誹謗中傷)を鑑みるに、被告が悪意を持ってフェイスマスクを使用したと言える。したがって被告の行為は原告Aの肖像権を侵害している。 | |||
*上記の通り被告は悪意を持ってフェイスマスクを使用しており、被告の行為は一般的な捉え方をすると原告Aの人格権侵害に値するほどに社会的評価を低下させるものである。これに同人誌内のカレー機関の描写も合わせて、原告Aの名誉感情を侵害している。 | |||
*同人誌内の原告Aを模した男性イラストの発言は、一般読者に「原告Aが少女レ○プ願望を有しており、それを抑えるためにオ○ホを使用しているが、それを使い尽くすほど性欲が強い人物である」という印象を抱かせるものであり、原告Aの名誉感情を侵害している。 | |||
*また同人誌内の原告Aを模した男性イラストを「■■■(性的に興奮した状態を維持している太った人物を意味する)」と呼ぶ記載は、原告Aが「太った性欲の塊のような人物」であることを示すものである。加えて原告Aを男性器が■■しているようなイラストで表現しており、原告Aを「根拠なく幼女を連れ回し、幼女の興奮して■■する人物」であるかのように描いている。これらはいずれも、原告Aの名誉感情を侵害している。 | |||
対して被告側の反論は以下の通り。 | |||
*同人誌という性質上、一般的な読み方に従えば、原告Aが指摘するような読み方は成立しない。 | |||
同人誌の頒布行為に加え、同人誌内の描写が原告Aの名誉感情を侵害しているかが焦点。被告は原告Aを模した男性キャラを「■■■」と呼ぶことや、男性キャラに幼女を前にして■■させるなどかなり具体的かつ生々しい描写で表現しているため、被告側の反論は難しい。<s>だから主張が殆ど無いんだろうし。</s> | |||
'''裁判所の判断''' | |||
(肖像権侵害の成否) | |||
人はみだりに自己の容貌、姿態を撮影されないことについて法律上保護されるべき人格的利益を有するところ、ある者の容貌、姿態をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合的に考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決せられる(最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁参照)。撮影された写真が雑誌等に掲載されるなどして公開された場合も、同様の判断枠組みが妥当すると考えられる。 | |||
前記2のとおり、本件マスクは、原告Aの写真を粗雑な方法で加工したものであり、原告Aの肖像の写真(甲10)とは相応に異なる印象を与えるものではある。しかし、本件同人誌では本件マスクが原告Aの「リアルマスク」と紹介されていること、原告Aが本件ゲームの愛好者等の間で著名であること等の事情に照らすと、被告が本件マスクの写真が掲載された本件同人誌を本件マスクを着用しながら頒布した行為は、原告Aの写真を無断で公開した場合と同様に理解することができる。また、本件同人誌の内容、とりわけ本件マスクの紹介の仕方等に照らすと、被告は、専ら原告Aを揶揄する目的で本件マスクを作成し、これを着用の上、その写真を掲載した本件同人誌を頒布したといえる。 | |||
以上のような写真の使用目的及び使用態様等に照らすと、本件マスクに係る被告の各行為は、自己の容貌等の写真をみだりに公開されないことについての原告Aの人格的利益を侵害し、その侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものというべきであり、不法行為法上違法と認めるのが相当である。これに反する被告の主張は採用できない。 | |||
(名誉感情の侵害) | |||
前記のとおり、被告は、専ら原告Aを揶揄する目的で本件マスクを作成し、これを着用の上、本件即売会にて本件同人誌を頒布した。加えて、本件同人誌には、原告Aと同定される男性イラストに係る本件男性イラスト描写が掲載されている(前提事実(3))。また、本件店舗描写についても、本件同人誌の他の記載と合わせると、「(省略)」などの記載は原告Aを指すことが明確に理解される。 | |||
このような被告の行為は、原告Aに対する社会通念上許される限度を超える侮辱行為であり、原告Aの人格的利益(名誉感情)を侵害する違法なものとして、不法行為に当たるとするのが相当である。これに反する被告の主張は採用できない。 | |||
裁判所は「肖像権侵害の成否」「名誉感情の侵害」とそれぞれ分けて判断した。<br> | |||
まず初めに「肖像権侵害の成否」について、肖像権侵害の判例を挙げた上で以下のように論じている。 | |||
*フェイスマスクは原告Aの写真を粗雑に加工したものであり、実際の原告Aの肖像とは乖離している。しかし同人誌内で原告Aの「リアルマスク」として紹介されていること、原告Aが艦これの愛好者の間で著名であることを鑑みると、被告の行為は原告Aの写真を無断で公開した場合と同等であるとみなすことができる。 | |||
*また同人誌内でのフェイスマスクの紹介から、被告は原告Aを揶揄する目的でフェイスマスクを作成・着用し、同人誌を頒布したと言える。 | |||
*よって上記のことから被告の行為は肖像権を侵害しており、その侵害が社会生活で受忍できる限度を超えていると見なすことができる。 | |||
次に「名誉感情の侵害」について以下のように論じている。 | |||
*同人誌内では原告Aを模した男性イラスト掲載されており、カレー機関を描写する中での記載(「■■■」など)が原告Aを指すことは明らかである。 | |||
*これらの描写は原告Aに対する社会通念上許される限度を超えた侮辱行為であり、原告Aの名誉感情を侵害していると言える。 | |||
上記を理由として裁判所は原告Aの主張を全面的に支持し、被告側の主張を退けた。<s>まぁ、そうなるな。</s><br> | |||
ただしここでの判断は同人誌内での描写に対するものであり、匿名掲示板やSNS等で同じ行為を行った場合においてもそのまま適用されるとは限らない点に注意(SNSに関しては後の争点で判断がされている)。 | |||
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=== 本件ツイートによる原告らの名誉毀損の成否 === | === 本件ツイートによる原告らの名誉毀損の成否 === | ||
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